live together



















新しい学園生活一日目を終えて、さて帰ろうと思ったら、
すでに葉は逃げるように(いやまさに逃げたのだ)さっさとまん太と帰ってしまってた。


フン何よ根性なし


思ってどこか肌寒さを感じた心を、早めに見ないふりして封じ込めた。


友達、できたのはいいことだわ
大事なものができれば身動きはとりづらくなるけど
目標に力強さと支えを得られるから。


一人歩く帰り道は下を向いたらカッコ悪いから、
できるだけまっすぐ先を見て歩く
帰ったら課してやる修行メニューを考えてやりながら。



まずスクワット(足腰の強さは基本よ) 
                                                  葉は
それから腕立て(基礎体力がなさすぎなのよ) 
                                                  あたしをどう思ってる?
持久力もないし(もっとたくさん走らせなきゃね) 
                                                  先に帰ってしまったわ。まん太と
憑依合体もなってない(まだまだだわ速さが必要)

                                              
    友達といたいのね、所詮あたしより仲良い友達
やることは山ほどあるわ(疲れちゃうったら)
                                      あたしが来たこと


                             嫌だった?



かもね

あいつは甘ちゃんだもの
楽できなくなってさぞかし残念でしょうよ
いいの
これがあいつのためだもの
あたしの愛情だわ
あいつが受け止められないなら押し付ければ良いだけ




けれど、覚えたての通学路を歩いて歩いて、
疲れた足にため息をつきながら、
ようやくたどりついた元・民宿『炎』の玄関の前で、あたしの足はぴたりと止まってしまった。




でももし心の底から歓迎されてなかったら      
                                     そんな事ないわ 嫌ねあたしいじけてる
本当にされてなかったら
             
                                     悪いほうに考えすぎよ
あたしはどうしよう
                  
                            ・・・本当に?



突然住み慣れないこの家と、真新しくて着慣れない制服と
この見知らぬ大地がどこまでも広大に広がっていることを知って息苦しさを感じた。

目の前に葉の家。
飛び込んだ東京の、
知らない土地にある


・・・・知らない家
あたしの家じゃない。





数分おいて、ふっと頭を振る。

馬鹿みたいだわ。いじけて、卑屈になって。

思い直して、戸を引こうとした。


のに、


思わず指を伸ばした。












ピンポーン













「お?」

みそ汁の火を急いで止めて、タンスの引き出しから一応判子を持っていく合理主義。
オイラだって考えなしなばかりじゃないんよ。

「うい」

がらりと開ければその向こうに、ぽつんと立ってたのは、アンナ。

「何してるんよ」

鍵が閉まってたわけでもないのに。すぐ来てほしいほど荷物を抱えているわけでもないのに。
問えばアンナはオイラの言葉にさぞかし驚いたように目を開いた。

「だって・・・」
「だってって・・・、チャイムなんか押す必要ねえだろ」
「・・・・でも」

珍しくしおらしいアンナを見るのは不思議な気分。妙に胸が高鳴る。

「ここは、お前んちだろうが」

言って少し頬が熱をもった意味を
わからないふりして部屋に入る
アンナも後からついてくる。
これからもこういう事がちょくちょく起こるのかと思うと、少し行く先が気になる。

「あ、アンナ」

振り返りもせずに

「・・・おかえり」

改まって口に出すことの照れ臭さをかみ締めて言ったのに、返事の遅さにちらっと振り返った。

「・・・ただいま」


そう答えた時の、照れたようなどっか泣き出しそうな
心の底から安心したような
アンナの表情を、オイラはこれから先も忘れることはないだろう。













「早く着替えて来いよ」

と言われ、あたしは、まだぼんやりとしたまま、もそもそ制服を脱いで、いつものワンピースを着ると、
ぎしぎし鳴る階段を下りて居間に向かった。


お前遅えからよお 腹減っちまったじゃねえか

と、頭をかきかき葉は、ちゃぶ台の横に座って早くも炊飯器を開けた
ほわっと湯気が向こうの景色をぼかして消えた。
丸いちゃぶ台にはすっかり二人分の夕飯が用意してあった。
この前HEIYUに行った時、葉と一緒に買ったばかりの
あたしのおわんもちゃんと、葉の向かいに箸と一緒に用意されていた。




重なり合った「いただきます」
の後で、葉はふと口を開いた。

「あ、あとよー」

ポケットを探ると、ほらよ、と言ってあたしにそれを差し出した



「お前の方が早えこともあるもんな」



頬を染めて

落とすなよ
と付け加えた。葉はその日、



あたしの手に、
ぴかぴかの、りんごのキーホルダーがついた合鍵を置いた。






一生続く、同居生活のはじまりだった。





































***
アトガキ
さっさか書いたほのぼの風味。
アンナが悩んでいる話が大好きです。


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