PinKy
女の子の高くなる声
嫌い
きゃいきゃい言う
それ嫌い。
露骨に性差を見せて
何のためなの
何がそうさせるの
浅ましい
媚びる声が嫌い。
ねえ麻倉くん ボブ好きなのあたしもあたしもいいよねあの歌がこの歌がえーじゃあCDかしてよ
本当?ありがとう明日?うれしいねえ麻倉くんてさどこ住んでるのねえねえこの
前青木レコードでみたのよ麻倉くんあたしもよく行くよねえこの前あの店員がねこの店員がね
自覚してるのかしら。彼女の声はいつもよりワントーン高い。
あからさまよそれ。
みっともないったら。ばかみたい。
葉だってわかるわよ媚びた声
彼女の地声じゃないってさ
ねえわかってるでしょう
笑っちゃうわよね
なのに葉ったら楽しそうに彼女と話を続けてる。
ボブがボブがってうるさいったら。
何よあんた、わかってないの?鈍感な男も嫌い
あたしは見兼ねて机につっぷして寝てしまおうとした。
だって、いつも葉はそうやって何でも流してみせるじゃない。
真似してみたわ。上手でしょう。あんたの真似ッコ
なのに視界を遮断したら、今度は聴覚が冴え渡って、・・・何よこれ
余計きゃいきゃい声が耳を突く。
バカ葉 嫌いよ
あたしはガタンと音を出して自分の席を立った。
どかどか歩くのに葉は気づかない。
廊下に出て待ってみるけれど、一向に追って来ないのを確認して、あたしは頬を膨らませた。
異性と話す時 女の子は声を高くする
でもそれ
自然なことなの
そういうふうにできてるんですって、女の子は。
無意識なんですって。ばかみたい。
人間て滑稽
「何怒ってんだ」
「怒ってないわ」
「怒ってるじゃねえか声が」
屋上の青空の下、二人いつものように弁当を食べ終わった時言われた。
不機嫌よ。当たり前じゃない。
口を尖らすあたしを見て、葉はため息をつく。
「アンナ?どうしたんよ」
聞いてくる葉は優しい。
でも同時に、その優しさが他の人間に向けられる事も思い出し、あたしはまたイライラを募らせた。
「何よボブなんて」
吐き捨てるように言った。
予想外の言葉に、んっと顔を上げる葉に詰め寄って、あたしはさらに続けた。
「林檎だっていいわ」
葉はゆるい顔であたしを見る。
あたしはこれを機に、どんなに林檎が素晴らしいか話してやる事にした。
あのファッション、カリスマ性、音楽、全てにおいて林檎は最高よ。ボブなんてメじゃないんだから。
ほら聞いてるの葉。ぼーっとしてるんじゃないわよ。
思わずあたしはますます顔を近付けて話す。
葉は口を開けてユルい顔をしている。
でもその目は間違いなくあたしを見ているし、耳は間違いなくあたしの声だけ聞いている。
ねえわかったの葉
林檎ってすごいのよかっこいいのよ
女性の気持ちを知っているんだから最近の女性歌手なんかとは違うの
切ない気持ちを歌ってるのよ。ねえ葉聞いてる?
林檎はね着物を着ることで・・・ちょっとあんた聞いてるの?
聞きなさいちゃんと聞いてあたしの話聞いてあたしの方ちゃんと見て聞いてねえ葉聞いてッたら
「ねえ聞いて」
「聞いてんぞ」
言った葉はなぜか含み笑い。
そう、さっきからじわじわ笑顔になっていく。
何か変と思った時、突然あたしは二本の腕に抱き締められた。
「ちょっと何よ」
「何かアンナ可愛いぞ」
ぎゅうぎゅうあたしを抱きしめて、葉は言った。
「嬉しそうに話すんな。何がそんなに嬉しいんよアンナ」
笑うようにはずんだ声は答えを知っていた。むかつく。
「嬉しくなんかないわ 聞き間違いよ」
「んなこたねえよ」
がしがし頭を撫でられて、あたしはむっとしてその手を払いのける。
「だってアンナの声いつもよりちょっと高え」
えっ?
「かわいい。」
***
題名=何となく女の子っぽい。
携帯でつくってた短文。
女の子のきゃいきゃいしてるとこ、あたしは好きです。
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